ヨミコミ!

漫画のレビューしてます。青年漫画、BLが中心。成年漫画やアニメ感想なども。

ズルくて嘘つきな男たち― ネガ はらだ





BL漫画のレビューです。

二冊同時刊行のうち「ダウナー系抉り愛(オビ参照)」が収録された短編集です。

はらだの漫画は、長編よりも短編が圧倒的に面白い。それはなぜか。すこし書いてみたいと思います。


はらだの物語に多く見られるのが、閉塞した関係だ。
お互いが、またはどちらか片方が抱く執着心(ほとんど異常なまでの感情として描かれる)を物語の中心とし、他者を介入させることのない密な関係になるまで/なった後をじっくりと構築していく。

そしてその関係は真っ当なものではなく、どちらかが傷ついたり気持ちを押し殺したりして得た、いびつな形になっている。この作品に出てくる男たちは、この現状を打破できない/しない。どんな形であれ、望んだものが手に入っているからだ。停滞しているふたりの関係性はあたたかいドロ沼とでもいおうか。男たちはそのドロ沼に自覚していても無自覚でも、深く浸かってしまっているのである。
読んでいると閉塞感を覚えるが、この息苦しさを描くのがはらだの真骨頂なのではないだろうか。

閉塞した状況へとキャラクターを追い込むストーリー作りが巧いが、これが長編となるとまた勝手が違ってくる。
BL漫画の長編ってのは(だいたい)ハッピーエンドが多い。ハッピーエンドイコール恋愛漫画では両想い。つまり、お互いがオープンに感情をさらけ出しても許される関係ということだ。
はらだ作品でキャラクターが活きるのは、お互いが世間的にはたとえ恋人同士であっても、どちらかが嘘をついていたり、誰かの犠牲の上に成り立っていることを見てみぬふりをしたり……といった「ズルさ」「いびつさ」にある。なので長編になると、最初は良くてもラストに向けてどんどんキャラの感情が平坦になり、面白さが薄まっていく。

端的に言えば、両想いになった時点でもうあとはどーでもよくなる(笑)。はらだはこの辺自覚的なんじゃないだろうか?と長編「好きなひとほど」を読んで思った。


もし、これから長編を描くなら、最初は幸せな関係からどんどん悪化していくか、どうにもならない状況に追い込まれてしまう(しかしそれを変えようとしない)ストーリーにしたらいいのではないだろうか。つまりバッドエンド
いいのではないだろうか……と書いているけど、これは個人的な願望です。はらだが描くそーゆー漫画が読みたいんです(笑)。


今回の短編集についていえば「後悔の海」「スイメンカ」は上で取り上げた「閉塞した関係」が丁寧に描かれている。「後悔の海」での主人公は自分の気持ちに気付いたときはすでに遅く、もうどうにもならない。「スイメンカ」では望んだものが手に入ったはずなのに手放しで幸せを享受できない主人公が描かれ、この両主人公に挟まれるキャラクターの心理描写はなく、言動とか表情で読者は「ん……?もしかしたら?」と思うわけです。しかし、この三人の関係を変えるには時が経ちすぎていてもう戻れないところまで来ており、それを知って両主人公が涙を流すラストシーンが、行き場のない悲しさを突きつけてきます。

「ピアスホール」は個人的にはあまりノれなかったかな。扱ってるモチーフとかテーマは好みなんだけど、描線や表現の仕方が某作家を思い出してそればっかチラついてました。

「リスタート」シリーズは、お互いが相手に対して嘘をつき続け、さらに自分にも嘘をついていたと自覚したときにはふたりの関係はかなり歪んだものになっていたというお話。
周りにも自分にもほんとうの姿を見せない、というふたりの性格や言動がキャラクターのファッションともリンクしているところが見事。周囲にとっても当人たちにとっても喜ばしい関係にはなっていないんだけど、とりあえず望みが叶っているのでハッピーエンドといえばハッピーエンドなのかもしれない。しかし、それまでの過程がなんとも痛々しいので読後感はまったくハッピーではない。

BL関係に介入する女子目線でのお話「わたしたちはバイプレーヤー」は、今まで主人公目線だと思っていた物語が、じつは漫画を読んでいるわたしたちが語っていたというラストに驚き。BL漫画好きな女子たちすべてが一度は考えたことのある(であろう)事実を示すメタ視点が新鮮でした。


ズルくてダメだけど、いとおしい男たちの物語が楽しめます。おすすめ。


では。

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