ヨミコミ!

漫画のレビューしてます。青年漫画、BLが中心。成年漫画やアニメ感想なども。

血と暴力の国 コ―マック・マッカーシー レビュー



言わずと知れた「ノーカントリー」という映画の原作となった小説。

私は映画を観てから小説を読んだのだけど、頭の中で映画のあのシーン、このシーンがはっきりと思い浮かびました。
特にシュガー。シュガーはもうあのビジュアルでしか想像できない。小説が先だったらどういうビジュアルを思い浮かべたのかな~。その辺が少し残念ではありますが。

読点(、)を挟まない短いセンテンスと、台詞にカッコがついていない特徴的な文章は初見では少しとっつきにくいですが、テンポ良く展開するストーリーにグイグイと引きこまれます。一気読み間違いなし。
また、キャラクターの心理描写をせずにアイテムや背景描写を書きこむタイプなので、かなり乾いた感じの読み心地になっており、題材とも合わさりどこまでも突き放した冷たい作品になっています。

解説という点では単行本の最後の「訳者あとがき」を読めば充分だと思います。
シュガーのあのボンヤリとした奇妙な雰囲気、台詞の意味など、あとがきによって理解が深まります。

そもそもこの逃亡劇は、最初のあの選択がなければ始まらなかったということ。
父とは交わらなかったと語るベル保安官が、物語の最後に語る夢の意味。

この辺りは解説を読んでハッとさせられました。


人がポンポン死ぬ(しかも描写はメチャそっけない)のでその辺が苦手な人はけっこう怖いかもしれませんが、
コ―マック・マッカーシーを読もうとする時点でそういう人はいないか(笑)。

小説(解説を読まずに)→映画→小説再読(今度は解説まで読む)ってのが贅沢な楽しみ方かな~と思います。

オススメ。


では。


照柿 高村薫 感想

照柿(上) (講談社文庫)照柿(上) (講談社文庫)
(2006/08/12)
高村 薫

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照柿(下) (講談社文庫)照柿(下) (講談社文庫)
(2006/08/12)
高村 薫

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やー、読了までにずいぶんかかってしまった。

それというのも多分、たびたび差し挟まれる工場内の描写が読むのシンドかったせいだと思う(笑)。専門用語もそうだけど、熱や油が頭の中に流れ込んでくるようなクドイ文章に苦しめられた。でも、読み終えてみると、なるほどこれは野田達夫の頭の中を書きだしていたんだな!と納得できたけど、読んでる最中は苦しかった~…。まるで自分も野田達夫になったような気分で、これが高村薫の文章のうまさなんだな、と感心しきりでした。

今回は、野田の視点を借りて、我らが合田雄一郎の客観的な姿を見れたのが嬉しかった。前作『マークスの山』では、犯人は頭がヘロヘロで頼りなかったせいもあり、主人公である雄一郎の理路整然とした立ち位置での描写ばかりだったんだけど、この『照柿』では、雄一郎がどんな男なのかという部分を詳しく知ることができました。予想はしていたけどやはりイケメンだったか(笑)。

二人の男が美女に振り回され、あげくに決裂してしまうのだけど、結局女の方はこれっぽちも男を顧みておらず、ただの一人相撲だった、ってのが何だか惨めで、しかし人間くさくて大変良かった。雄一郎は結局、女に自己投影している気がするんだけどな~。早く自分の気持ちに気づけばいいのに…。

そして今回も、別次元の世界観で繰り広げられる加納祐介との密会(違うって)。ダンテの『神曲』を媒介に自分の恋愛観を語るとか…かっこよすぎて吹いたぞ。紬の着流しを着て、縁側でカレイをつまみながらウイスキーを飲んで、「あんたにも意志ではどうにもならないことがあるわけか」という雄一郎に対し、「目の前にいるよ」…

…お前らっ。読者はとっくに気づいているぞ。じれったい!!(笑)


猛暑、鉄工所、不眠、臙脂色…高村薫の作品はモチーフがごっそり事件性に関わることが多い(気がする)んだけど、この事件は夏だからこそ起こったんだと思えるほど、必然性に満ちていて、その説得に足りて余りあるほどの情報量、文章の巧みさがスゴイ。そして、野田達夫が追い求めた父の絵が青色だって所も意味深。


はい、そして加納祐介にとってのヴェルギリウスは雄一郎でファイナルアンサーってことで。


では。



でかい月だな 水森サトリ レビュー

でかい月だな (集英社文庫)でかい月だな (集英社文庫)
(2010/01/20)
水森 サトリ

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ん~、何かモヤッとした終わり方だったな~。

タイトルとか、二人の再会とか、キャラバンとか、wktkするキーワードを盛り込んでおいて、うまく使いきれなかった感じがしました。

というかかごめちゃんいらなくね?
もっと言えば中川もいらなくね?

話をバラけさせておいて、ラストで一つにまとめようとしたのかな?どうにも不完全燃焼ぎみでした。
書きたい事がたくさんあるのは分かるので、もっとじっくりコトコト煮詰めたものがあったらな~。


とにかく綾瀬兄弟のカッコ良さは伝わったぜっ。



では。

黄金を抱いて翔べ マークスの山 レビュー

活字中毒のため、しばらく小説の記事が続くかもしれません。


黄金を抱いて翔べ (新潮文庫)黄金を抱いて翔べ (新潮文庫)
(1994/01)
高村 薫

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高村薫のデビュー作。
情景が分かりにくい文章と、それなのになぜかビシッと肉付けができているクールすぎるキャラクター。互いにイイ味出してます。
文章の一区切りが長いので、頭に入って一回咀嚼してから理解しないとなかなか読みにくい。
主人公がモテモテ。若い男二人もたぶらかして…結果的にあんな感じに。オム・ファタル的な魅力を持ちつつ、本人は「人間のいない土地に行きてえ……」とか思ってるマイペース。
個人的には春樹くんがイチオシでした。

最後、主人公どうなったのかよく分からなかったんですが、これは個々の判断にゆだねるって事?人間のいない土地っていうのが引っかかって、嫌な予感しかないのですが。読解力がないんですかね……。



マークスの山 (ハヤカワ・ミステリワールド)マークスの山 (ハヤカワ・ミステリワールド)
(1993/03)
高村 薫

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背景描写は、「黄金を~」より分かりやすくなってると感じました。
ある事件が、さまざまな嘘、人物、事件をズルズル呼び覚まし、まるで積雪のように積もりに積もった年月を飲み込むかのような一つの山へと収束していく展開には、ひたすら惹きつけられました。
一方で、事件を追う刑事・合田と、検事・加納のビミョーな関係も気になるところ。血生臭い事件の合間の、一服の清涼剤の如く挟まる密会←? には、なんだか…怪しいニオイがするっ!
これに続く作品でも、いろいろ進展があるようなので、じっくり楽しみたいと思います。

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