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茄子 黒田硫黄 全3巻 レビュー 男と女のはてしない距離








新年だから…てわけでもないですが、黒田硫黄『茄子』全3巻のレビューです。
新装版も出ているみたいですが、私が持っている方のリンクを貼っておきますね。

『茄子』は(一応)短編集です。どの話もどこかに茄子が出てくる。野菜のナスですよ。
1巻収録の『アンダルシアの夏』、3巻収録の『スーツケースの渡り鳥』はアニメ化されたので、知っている方も多いと思います。

色んな読み方ができる最高に面白い漫画なのですが、当ブログでは「男と女」という視点で茄子を読んでいきたいと思います。というのも、ほとんどの話に「男と女」が登場し、その距離感が千差万別で実にオモシロくて興味深い。


■「センセイ」と「眠る女性」 
1巻、第1話から登場する「センセイ」(本名:高間)は田舎で茄子を育てながら生活する中年男性。3話の台詞が本当ならば50代。どうやらインテリらしいんですが、作中では田舎の変わったオッサンと言う感じで描かれています。3話でベンツに乗って高間の家に訪れる女性。高間とは親密な間柄という雰囲気ですが、面白いのはこの女性、家に来て早々に22時間も爆睡するのです。朝から女性のために仕込んだ料理を一人で食べながら、ひたすら眠り続ける彼女の寝顔を眺める高間。女性が起きるまでいつものように一人で読書をしたり食事をする高間の気の抜けたような、間の抜けた時間がしばらく描かれます。眼鏡の奥の目を描かないことで、高間がどういう風に女性を眺めているのか、どんな目をしているのかが分からない。
眠る時に一緒に手をつなぐほかは、ほとんど話すこともない二人。ですが、女性の台詞の中で、この二人は長いことこういう時間を過ごしてきたんだと分かります。かなり濃密な、二人にしか分からない関係なのね…と、読者は思うことでしょう。最初は。

ですが、最後の一コマで認識が覆ります。
高間の家から去る女性の台詞。
「わざわざ会いに来てんのに……ほんと失敬よね」(p.74)

そうです。女性はただ寝に来ているわけではないのですね。なのに、高間はこんな事も言うわけです。
「はじめて会ったときから君のファン……ずっと」(p.74)

『ファン』という耳ざわりの良い言葉の裏にある距離を、女性は感じ取ったのでしょう。

高間が女性に対して本音を吐露する場面が一か所だけあります。
「毎晩一緒なら 毎晩眠れるかしら」と言った女性が眠った後、ひとり布団を抜け出しながら「ありえないね」と言う高間。(p.70,71)
その後一人でベンツの座席に座り、星空を眺めるのです。「ありえない」という台詞も、女性に対して言っているのではなく、あくまで独り言。おそらく、高間にとってはこの関係が心地良く、変えたくはないのかもしれません。女性がどう思っていようと。

7話では、高間が旧友に会うため東京にやって来ます。ここは女性が住んでいるらしく、電話を入れる高間。が、女性は名古屋に出張していて結局会うことは叶わず。
「バカ」と言われ、「やれやれ」とベッドに潜り込む高間(p.167)。本当にバカですね~(笑)。旧友にも「人嫌い」と指摘されている通り、高間のズレっぷりが顕著に分かるエピソードです。

3巻収録の19話でも、二人のやり取りはスレ違いまくり。
「あのベンツ ブァリブァリ稼ぐおばちゃんの」(p.61)を聞いてしまった女性が溜め息を吐く場面なんてもう、「高間はアホか?」と読者も溜め息を漏らすことでしょう。

「無神経じゃない男なんていないじゃない?」(3巻 p.59)
「俺らは そやってスレ違うんだ 死ぬまで」(1巻 p.73)


■「国重」と「有野」
1巻8話で登場するふたり。高校を卒業し、一度は就職するものの離脱。モラトリアム期間を過ごしている若者です。
1巻ではウサギを抱えている有野に遭遇し、キャッチボールをする約束をして別れる国重。当日、早起きしてお弁当を作り、二人で河原へやって来ます。余談ですが、買い物→弁当作りの一連のシーンが良いですね。この話の白眉は、弁当を食べながら交わす会話ではないでしょうか。
「私さあ レンアイとかケッコンとかコドモうむとか なんかそーゆうことぜんぶしないで生きていこうと思う」
「そうなんだ でもわかるよな気もする (中略) 人並みのことってできないといけないのかなあ」(p.195)

この場面で国重が言う「レンアイ、ケッコン、コドモうむ」の言葉がカタカナであると言う部分に注目。「文学」と「ブンガク」のように、漢字とカタカナでは受けとり方の印象が変わってきます。おそらく国重は、上で上げた3つの事柄をあえて滑稽な言い方で表現し、彼女にとっては形骸化している、と言う意思表明をしているのではないか。そして、それを受け止めるのが「有野」(男)である。この場面で二人の「男」と「女」の性別は消失します。
ただ、8話のラストで有野が「働かないで生きていけないかなー」と言うのには「無理じゃん?」とにこやかに切り捨てているのが面白かったです。「仕事」は「シゴト」にはならないわけで、その辺りは国重も良く理解しているという1コマ。

それを証明するかのように、2巻14話の再登場シーンでは国重は就職し、一人暮らしを始めます。この話のメインは、インドへ旅立つと言う有野の「手向け」に、未クリアのゲームをクリアまでプレイしよう、と言うイベント。
その序盤で国重は有野に「あるもの」を買いに行かせるのです(p.141~142)。ここで上記で述べた「性別の消失」がまた描かれている。性別を感じさせつつもそれをケムに巻くかのようなシーンは、読み手に新鮮な驚きを与えてくれます。
国重と有野は性別を感じさせない友人関係を築き、ボールやゲームと言ったツールを共有したコミュニケーションを繰り返します。

ゲームクリアからのテキパキとした別れのシーンも良いですね。


「焼き茄子にビール」
1巻収録・15話『焼き茄子にビール』は新婚夫婦のある深夜のお話。「腹へった」と訴える妻のために夫が腹を満たすプランを考える。しかし行く手を阻むさまざまな障害が……。
短編なのに話の8割が空想&妄想と言う変わった構成の中浮かび上がるのは、セックスをしても「結婚」(ケッコンに非ず)してもお互いを完璧には理解できない男と女。
隣に夫が寝ているのに「世界中にたった一人でいるみたい」と嘆く妻(p.149)。
「一人で待ってて朝まで帰ってこなかったら あたしよその男にヤラレにいくね」(p.160)
…この台詞だけ聞くとメンドクサイ女かと思われますが(妻自身も自覚的な描写アリ)、突拍子もない空想の後には「電話をちょうだいよ」とあくまでリアリズムにのっとった返答をするのです(p.168)。
p.169~170のやり取りも、案外と妻は直截的で即物的。センチメンタルな夫の言葉に「そうなんだ」と言いながら服からブラジャーを抜く一コマが冴えています。
空想&妄想とリアリズムを兼ね備えた妻の前で、夫はあたふたとするばかり。空想の中でも然り。
ただ妻は「世界中にたった二人でいる気持ちなら我慢できる」のです(p.160)。
オープニングとエンディングが「目を開ける」「寝る」と言う『対になっている』事により、おそらくこの二人のこう言うやり取りは、これからも続いていくのだろうな、と思わせられます。


■3巻でのやり取り
さて、「センセイ(高間)」と「女性」は微妙な関係を続けています。しかし3巻の最終話でふたりの関係には変化が訪れます。女性は高間の家まで来なくとも眠れるようになり、高間は新天地での仕事を打算されます。ここの雲をつかむようなやり取りはもどかしくもあり、二人が経てきた歳月を象徴していてグッときます。
「20年で たんすが作れるくらいになるのかしら」と言う女性に「30年まてば 桐の棺桶にちょうどいいかもな」と答える高間(p.190)。
この台詞は、高間が初めて彼女に発した本音なのかもしれません。棺桶と言うのは、つまり…。
その後のシーンで桐の木が成長しているのを見る限り30年以上は経っていると思いますが、その後ろには朽ち果てたかつての高間家があります。この1ページはほの寂しい印象ですが、さて、高間と女性はどうなったのかな? …と想像を掻き立てられる場面でもあります。


■男と女
さて、三者三様の男女を取り上げてみました。

男と女にははてしない距離があり、飛び越えるか歩み寄るか、はたまた平行線をたどっていくのか、行きつく先は分かりませんが、その道中で構築するふたりの関係は悲しくもあり楽しくもあり面白くもあり、時にドラマチックです。

黒田硫黄の筆力に驚きつつも、この人の視点は一体いくつあるんだ? とオソロシくなります。




今回は「男女」と言う視点で『茄子』を読んでみましたが、もちろんふつーに読んでも面白いです。


(蛇足ながら、個人的には3巻はあまり好きではなく…ケレン味があり過ぎて。現実的な舞台を取り上げてきた2巻と異なり、3巻ではSF的な趣向を凝らした話が多いため『茄子』の魅力がボヤけた印象は拭えない。『茄子』シリーズでなければ面白いのですが。あくまで私の好みなのですが…。)

長くなりましたが、オススメ! なのは間違いないので、まだ読んでいない方はぜひ。

では。


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10DANCE 1~3巻 井上佐藤 レビュー








鈴木信也と杉木信也は互いに専門のダンスを教え合い、10ダンス出場を目指している。
最初こそ反発し合っていた2人だが、それぞれのダンスを認め合い、唯一無二のパートナーになっていく。
そしてその関係はしだいにダンスを越えて―。


名前こそ似ているが性格もダンスも真逆の二人。お互いの才能を認めつつも、初めは相容れなかったのですが、徐々に惹かれ合っていく。

男同士だから、と感情に名前をつけない二人の無自覚なやり取り…。
気持ちが近づいたと思うとプイとそれてしまう、一歩進んで二歩下がる感じ……。
あ~じれったい!!! でも好き!!!(笑)

苦しい立場にいる彼に、自分が引導を渡してやりたい、と言う残酷ながらも深い感情。
同じ仕事だからこそのライバル心と愛情のせめぎ合いに揺れる彼らは、キュートかつカッコいい。

繰り返し出てくる「同性への気持ちに戸惑う」描写により、二人の気持ちに、より厚みが出ています。

恋愛描写もさることながら、テーマであるダンス競技も詳しく描かれています。読んでると興味が沸いてくる事請け合い!

個人的には『ラテンの男の子の喋り方』に興味しんしんです。笑


この作品、もともとはBL誌にて掲載されていたようですが、現在は「ヤンマガサード」に移籍しています。
一般誌で大丈夫なのか? と思いますが、懐が深いようですね。
これからの展開にも大いに期待しています!! 

応援する意味でも本誌を買うしかないか…。

超オススメ!!!


では。



井上佐藤のことを書いている記事はこちら。(少しですが)


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セトウツミ 8巻 【完】 此元和津也 レビュー



ふたり、喋り終わる。

男子高校生が川べりでダラダラ喋る漫画、これにて最終巻です。

読み終わって一言…

良すぎか!!!!!

ある事実が明かされたあとの54話は今までの読み方がガラリと変わってしまうし、
そうしてあのメモ帳からの最終回。

最終回は瀬戸と内海が並んで話していないのに、二人の繋がりが十分に分かるやり取り。

良すぎか!!!!!

ギャグ漫画が良く言う『衝撃の展開』って、トンデモ展開や尻すぼみになる事が多々ありますが、
そんな懸念などあっさりと吹き飛ばし、地に足がつきつつ、誰も想像しなかったであろうラストを迎えます。

メモ帳のくだりはあんまり上手すぎてビビりましたが…瀬戸のスーパースターっぷりを発揮する意味ではこれ以上ない展開ですね。


終わりを迎えたのは寂しいですが、最高のエンディングを読めて幸せでした。

傑作!

では。

★セトウツミ 1~2巻 レビュー★

セトウツミ 1~2巻 此元和津也 レビュー

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この川で 暇をつぶすだけの青春が あってもええんちゃうんか

まったりゆったりしゃべるだけ。
関西の男子高校生、瀬戸と内海のクールでナナメでシニカルな放課後トーク。


男子高校生2人が、川べりでグダグダ喋っている漫画。
ほんと、それだけなんですが……めっちゃ面白いです。

頭が良くて世の中を斜めに見てる内海くん。ノリで世の中を渡っていそうな瀬戸くん。
学校ではほとんど接点がない(らしい)二人の掛け合いは、べったり仲良しなわけでもなく、かといって突き放している感じでもない、ほどよい距離感が良い味出しています。

なんだかんだお互いを思いやる時もあったりして、普段のトークに挟まるそんな瞬間もグッときます。

個人的お気に入りは、1巻収録の第7話「親方と裏方」。「みじかない?」のくだりは何回読んでも笑える。

いろんなパターンでボケを仕掛けたり落としたり、と意外に展開のバラエティが豊富。
自分のお気に入りの話を見つけるのも良いかも。

これはオススメ!!

では。

ヴォルたん……っ 「狼の口 ヴォルフスムント」 4~6巻 久慈光久

あけましておめでとうございます。
このブログもなんだかんだ6年目を迎えるわけですが、更新する方がレアなブログになってます(放置し過ぎ)。

相変わらず気まぐれに更新頻度が上がったり下がったりしそうですが、コンスタントにはやっていきたい……と思ってますので、どうぞ今年もよろしくお願いいたします。

さてさて新年一発目のレビューを。



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表紙で若干ネタバレしちゃうのがおちゃめなところ「狼の口 ヴォルフスムント」4~6巻のレビューです。

5巻でヴォルフラムを追い詰めた!と思いきや、やっぱりこの漫画、リアルというかなんというか、心臓一突きでヒルデ姉さん退場。もちろん死に際のカッコイイ一言なんてありません。

6巻では、やっと長年読者がじりじりと溜めてきたフラストレーション、解放!!その処刑シーンがなかなかエグくて大変よろしかったです。1巻まるまる処刑シーンでも良かったくらい(長いって)。
でもでも、この人たちは戦争をしているわけで、ヴォルフラムがシンダからと言って終わりません。主人公格のヴァルターも重傷だし、どうなるやら。まだ意地悪な展開が待ってそうで、怖くもあり、楽しみでもあり……。

いやー、ヴォルフラムが死に際まで高飛車なのが良かったですね。


では。



★狼の口 1巻 レビュー★

★狼の口 2巻 レビュー★

★狼の口 3巻 レビュー★
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