照柿 高村薫 感想
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やー、読了までにずいぶんかかってしまった。
それというのも多分、たびたび差し挟まれる工場内の描写が読むのシンドかったせいだと思う(笑)。専門用語もそうだけど、熱や油が頭の中に流れ込んでくるようなクドイ文章に苦しめられた。でも、読み終えてみると、なるほどこれは野田達夫の頭の中を書きだしていたんだな!と納得できたけど、読んでる最中は苦しかった〜…。まるで自分も野田達夫になったような気分で、これが高村薫の文章のうまさなんだな、と感心しきりでした。
今回は、野田の視点を借りて、我らが合田雄一郎の客観的な姿を見れたのが嬉しかった。前作『マークスの山』では、犯人は頭がヘロヘロで頼りなかったせいもあり、主人公である雄一郎の理路整然とした立ち位置での描写ばかりだったんだけど、この『照柿』では、雄一郎がどんな男なのかという部分を詳しく知ることができました。予想はしていたけどやはりイケメンだったか(笑)。
二人の男が美女に振り回され、あげくに決裂してしまうのだけど、結局女の方はこれっぽちも男を顧みておらず、ただの一人相撲だった、ってのが何だか惨めで、しかし人間くさくて大変良かった。雄一郎は結局、女に自己投影している気がするんだけどな〜。早く自分の気持ちに気づけばいいのに…。
そして今回も、別次元の世界観で繰り広げられる加納祐介との密会(違うって)。ダンテの『神曲』を媒介に自分の恋愛観を語るとか…かっこよすぎて吹いたぞ。紬の着流しを着て、縁側でカレイをつまみながらウイスキーを飲んで、「あんたにも意志ではどうにもならないことがあるわけか」という雄一郎に対し、「目の前にいるよ」…
…お前らっ。読者はとっくに気づいているぞ。じれったい!!(笑)
猛暑、鉄工所、不眠、臙脂色…高村薫の作品はモチーフがごっそり事件性に関わることが多い(気がする)んだけど、この事件は夏だからこそ起こったんだと思えるほど、必然性に満ちていて、その説得に足りて余りあるほどの情報量、文章の巧みさがスゴイ。そして、野田達夫が追い求めた父の絵が青色だって所も意味深。
はい、そして加納祐介にとってのヴェルギリウスは雄一郎でファイナルアンサーってことで。
では。






